【注目の国連情報】国際刑事裁判所(ICC)とは?
ー2024.12.6ー
2024年11月21日、国際刑事裁判所(ICC)は、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相、イスラム組織ハマス幹部アルマスリ氏に対し、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を発行したと発表しました。またICCはロシアのプーチン大統領にも逮捕状を発行しているほか、先月27日にはミャンマーの少数派ロヒンギャの人たちを迫害するなど人道に対する罪を犯した疑いで、ミャンマー軍トップの逮捕状を請求しています。
これらのニュースで耳にする「国際刑事裁判所(ICC)」とはどのような機関で、国連とはどのような関係にあるのでしょうか。
そこで今回は、少し前の記事になりますが、国際連合広報センターのウエブサイトに掲載されている、以下の記事について、そのポイントをご紹介します。
●国際刑事裁判所(ICC)とは?(UN News 記事・日本語訳) (2024年6月11日)
<要旨>
オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(International Criminal Court: 以下ICC)は、「国際刑事裁判所に関するローマ規程」に基づき2002年に設立された、戦争犯罪や人道に対する罪で個人を訴追できる刑事裁判所です。以下に、ICCに関する5つの事実と、ICCがより公正な世界の構築にどのように貢献しているのかについて紹介します。
<概要・ポイント> ※文中の■小見出し及び記事の要約は、国連支援財団による
■もっとも重大な犯罪を裁く・・・人道に対する罪、戦争犯罪等を犯した加害者を捜査し訴追するための“世界初の条約に基づいた常設の国際刑事裁判所”)
・ICCは、「多数の児童、女性及び男性が人類の良心に深く衝撃を与える想像を絶する残虐な行為の犠牲者となってきたこと」を念頭に創設されました。
・ICCは、人道に対する罪、戦争犯罪、ジェノサイド、侵略の罪を犯した加害者を捜査し、訴追するための、世界初の条約に基づいた常設の国際刑事裁判所です。国際社会が協力して、これらの罪の不処罰を許さないことで犯罪の発生を防止し、国際の平和と安全の維持に貢献することをめざしています。
・これまでに、スレブレニツァを含む旧ユーゴスラビアで行われた戦争犯罪に問われた個人の訴追に成功しており、国際司法にとって重要な事件を解決し、「少年兵の利用」、「文化遺産の破壊」、「性的暴力あるいは罪のない市民への攻撃」といった犯罪に光を当ててきました。
・しかし、逮捕状を発付し、容疑者を逮捕することは困難を伴います。ICCは令状を執行する警察を持っていないため、加盟国がその命令を実行することに依存しています。
→加盟国の協力義務:加盟国は、ICCからの逮捕及び引渡しの請求に応じなければなりません。
■被害者の参加を支える・・・被害者はICCの司法手続きのすべての段階に参加
・ICCは、国際社会全体の関心事である最も重大な罪の責任を負う加害者を裁き、処罰するだけでなく、被害者の声が確実に届くように努めています。
・被害者は、ICCの司法手続きのすべての段階に参加します。これまでに1万人を超える残虐行為の被害者たちが手続きに参加しています。同裁判所はまた、被害者や証人の安全と、身体および心理的な健全性の確保に努めています。被害者は提訴することはできませんが、捜査を開始するか否かを決定するための情報も含め、検察官に情報を提供することができます。
■公正な裁判を保証する・・・合理的疑いの余地なく有罪であると証明されるまでは無罪と推定
・ICCにおいては、すべての被告人は、合理的疑いの余地なく有罪であると証明されるまでは無罪と推定されます。いずれの被告人も、公開かつ不偏的な審理を受ける資格を持ちます。
・ICCでは、容疑者および被告人は「罪状を知らされること」、「弁護人を自由に選ぶこと」、「被告が完全に理解できる言語で審理を受ける権利」など重要な権利を持っています。
→同裁判所では、40超の言語の専門的な通訳と翻訳者を雇い入れ、時には同じ審問で4つの言語を同時に使用することもあります。
■国内裁判所を補完する・・・ICCは、“最終手段としての法廷”
・ICCは、各国の国内裁判所に取って代わるものではなく、最終手段としての法廷です。
→最も重大な犯罪の加害者を捜査し、裁判にかけ、処罰する第一義的な責任は、各国にあります。
→ICCが介入するのは、同裁判所が裁判する権限を有する重大な犯罪が発生した国が、その犯罪に真摯に対処しようとしない、あるいは対処できない場合に限られます。
■司法の強化を後押しする・・・ICCは独自の警察組織を持たないため各国の協力が必要ての法廷”
・ICCは、すべての大陸の120を超える締約国の支援により、常設の独立司法機関としての地位を確立してきました。
・しかし、国の司法制度とは異なり、ICCは独自の警察組織を持ちません。
→そのため、逮捕状や召喚状の執行を含め、各国の協力に依存しています。
・ICCはまた、危険にさらされている証人を移動させるための領土を持っていません。そのため各国の支援と協力に大きく依存しているのです。
◎ 国際刑事裁判所(ICC)と国際司法裁判所(ICJ)の違い
国際刑事裁判所(ICC)」と「国際司法裁判所(ICJ)」は、よく混同されます。両者の違いは、概ね以下のとおりです。
・両者の最も大きな違いは、国際司法裁判所(ICJ)の訴訟では「当事者は国」となりますが、国際刑事裁判所(ICC)は戦争犯罪や人道に対する罪について「個人を訴える刑事裁判所」であるということです。
・国際司法裁判所(ICJ)が国連の機関である一方、国際刑事裁判所(ICC)は国連総会の承認を受けているものの、「法的には国連から独立」しています。しかし、これまでにICCは国連と継続的な協力関係を築いており、2005年より毎年、ICCは国連総会に対し活動報告書を提出しています。
<国連支援財団担当者より>
2024年2月現在、ICC には124ヶ国が加盟しています。日本は2007年10月1日にICC加盟国となりました。
日本はこれまで資金面での協力や、裁判官を輩出するなどの大きな貢献をしてきており、現在ICC所長は日本人の赤根智子氏が務めています。
世界各地で紛争が収まらない状況下、赤根所長は今月初めのICC加盟国年次会議の演説で、ロシアのプーチン大統領やイスラエルのネタニヤフ首相への逮捕状発行をめぐり、「攻撃や脅迫、圧力に直面している」との危機感を示しました。
一方で、赤根所長は「正義を追求し、残虐行為の被害者の尊厳と権利を擁護し続ける」と述べ、圧力に屈しない姿勢を強調しています。
世界各地の紛争が収まらない今だからこそ、国際社会はICC設立の原点である「人道に対する罪、戦争犯罪、ジェノサイド等の不処罰を許さないことで犯罪の発生を防止し、国際の平和と安全の維持に貢献する」という趣旨を改めて共有し、協力していかなければならないと思います。
(出所)
国際連合広報センターウエブサイト「国際刑事裁判所(ICC)とは?(UN News 記事・日本語訳)(https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/50307/)」2024年06月11日、国連ニュースセンター「UN News」:「What is the International Criminal Court?(https://news.un.org/en/story/2024/10/1156251)」のDeepL翻訳又はGoogle翻訳による日本語訳を基に国連支援財団作成