【注目の国連情報】未来サミット2024:それは何をもたらすのか
ー2024.8.31ー
最近の国連活動の中で、今回は、国際連合広報センターのウエブサイトに掲載されている、以下の記事について、そのポイントをご紹介します。
●未来サミット2024:それは何をもたらすのか (2024年8月2日)
<要旨>
国連が2024年9月に開催予定の「未来サミット」の目的や背景をわかりやすくまとめた日本語資料「未来サミット:それは何をもたらすのか」について、その概要・ポイントを整理する。
<概要・ポイント> ※文中の■小見出し及び記事の要約は、国連支援財団による
■「未来サミット」の目的
・私たちが生き残るために、効果的なグローバル協力の重要性が増しているが、不信感が蔓延する環境のなか、今日の政治と経済の現実を反映していない時代遅れの仕組みに頼ったままでは、効果的なグローバル協力の実現は困難である。
・「未来サミット(Summit of the Future)」では、すでに合意されている目標を達成すると同時に新たな脅威や機会に取り組むために、どのように協力すべきなのかを検討する。そして、その成果は政府間で合意される「未来のための協定」にまとめられる。
・「未来サミット」は、効果的なグローバル・ガバナンスに必要な仕組みと信頼を再び活性化することを期待されている。
■「未来サミット」の背景
・2020 年の国連創設75 周年にあたり、加盟国はグローバル・ガバナンスの強化を誓い、国連事務総長に対して現在および未来の課題に対処するための提言を求めた。
・これに対して事務総長は、既存のコミットメントの履行を加速させ、グローバル・ガバナンス内の穴を埋めるために、人々、国同士、世代間の連帯と、それに対応する多国間システムの刷新を呼びかけ、報告書『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』(A/75/982)をまとめた。
・事務総長はこれらの措置を実行する上での一世代に一度の機会として、「未来サミット」を報告書の中で提案した。
■成果として、行動志向の「未来のための協定」を採択
・2024 年9 月にニューヨークで開催される「未来サミット」では、政府間で協議された、行動志向の「未来のための協定」を成果として採択する。
・この文書は、「持続可能な開発と開発のための資金調達」、「国際の平和と安全」、「科学・技術・イノベーション(STI)、そしてデジタル協力」、「若者および将来世代」、「グローバル・ガバナンスの変革」の章から成り、グローバル・デジタル・コンパクトおよび将来世代に関する宣言もまとめることになっている。
■SDGs を加速させる
・未来サミットは、2023 年の「SDG サミット」を足掛かりに開催される。
・多くの提案は、グローバル協力の「目標」の実現を目指すためのグローバル協力の「手段」を改善するものであり、「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」を一気に加速させる。その「手段」は、(a)SDGsを再び軌道に乗せ、(b)新たな機会とリスクに対応することにある。
■インパクトをもたらす「未来のための協定」
・現在協議中の協定の草案は、今日の現実を反映し、あらゆる場所のあらゆる人々に資する多国間システムを促進する可能性を持っている。
・以下はそのための手段の一部である。※協定のすべての章において、人権、ジェンダー、持続可能な開発に強く留意しなくてはならない。
◎持続可能な開発と開発のための資金調達
・2030 アジェンダを完全かつ期限内に実施し、2023 年の「SDG サミット政治宣言」を実施する。そのために、誰一人取り残さないという目標の下、緊急の拡大した行動、政策、そして人々とその社会経済的発展への投資を行う。
・SDGs のための資金調達に大幅な変革をもたらす。
・気候と環境に関する取り組みを加速させる。
◎国際の平和と安全
・従来の領域でも新たな領域においても、紛争をよりよく防ぎ、管理し、解決できるよう、集団安全保障体制を刷新する。
・加盟国間の対立を未然に防ぐため、事務総長による周旋を含め、予防外交と仲介のメカニズムをより全面的に活用する。
・社会全体での予防の取り組みを国レベルで強化する。
・武力紛争における文民の保護を強化し、残虐な犯罪や侵害に対する説明責任を高める。飢餓の撲滅を含め、人道支援を拡大する。
・核兵器のない世界の実現に目に見えるほどに近づく。無差別兵器、生物・化学兵器、小型武器などに関して、軍縮と軍備管理の取り組みを再活性化する。
・平和活動を現実的かつ責任ある形で活用する。
・女性と平和、安全に関するコミットメントを履行し、安全保障と気候変動が結びつく事柄に対処する措置を講じる。
・より効果的で予防的なテロ対策に取り組む。
・新たな領域や技術の武器化を回避・抑制し、責任あるイノベーションを促進するために、以下を実現する。
→宇宙空間の軍事化を防ぐための条約
→人の制御や監視なしに作動する自律型致死兵器システム(LAWS)を禁止する、法的拘束力のある制度
→国家および非国家主体による公共サービスのインフラに対する悪意あるサイバー攻撃を防ぐための規範
→人工知能(AI)の軍事利用に関する規範およびルール
→バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、人間拡張テクノロジーに関する検討
◎科学・技術・イノベーション(STI)、そしてデジタル協力
・技術に関する能力とアクセスにおける地域間や男女間の格差を縮小する。
・政策決定における科学的知見の活用を拡大し、より多くの人々が科学・技術・イノベーションの恩恵を受けられるようにする。
・SDGs の達成における開発途上国への支援を含め、国連の活動において科学・技術・イノベーションを活用するために国連の能力を強化する。
・人権を保護し、誰一人取り残さない方法で、デジタル技術の機会を活用し、リスクを管理するためのグローバル・デジタル・コンパクト(別途協議され、協定に付属予定)を採択する。
◎若者および将来世代
・世界的な意思決定への若者の参加を拡大・強化する。
・若者がその権利と可能性を実現できる環境を国レベルで整備する。
・グローバル・レベルでの意思決定において、未来への影響を体系的に考慮する。「将来世代に関する宣言」(別途協議され、協定に付属予定)で謳われるコミットメントと実施手段を通じて、将来世代に対する予見可能な害を意識的に回避し、将来世代の利益を守る。
・加盟国が将来世代をよりよく考慮することを支えるための、具体的なガバナンスを提案し、その運用体制を構築する。そして、国際レベルでの長期的で先見的なガバナンスを鼓舞する。
◎グローバル・ガバナンスの変革
・マルチラテラリズム(多国間主義)を、効果的かつ公正で、代表性のある包摂的(政府間のものでありつつも多様な主体が貢献できる)で、すべての主体が協力できる、ネットワーク化されたものにする。
・安全保障理事会の構成および作業方法を刷新し、より効果的かつ代表性のある信頼性の高いものとする。
・総会を再活性化し、平和と安全における役割を強化し、女性事務総長の実現を目指す。
・経済社会理事会(ECOSOC)を強化し、「国連女性の地位委員会(CSW)」の再活性化に向けて前進する。
・平和構築委員会を強化し、国際金融機関を含めた他の主体とより効果的に連携できるようにする。
・国連の人権の柱を強化し、より良い資金調達と協調を図る。
・国連を、イノベーション、データ、デジタルツール、先見性、(行動)科学を効果的に活用する組織へと更新し(「国連2.0」)、国連開発システムを持続可能な資金で支える。
・国連と市民社会、民間セクター、地域機関、各国議会、地方・地域当局等とのパートナーシップを深化させる。
・持続可能な開発の進捗を計測する上で、国内総生産(GDP)を超えた(人と地球、未来を考慮に入れた)尺度を開発するために、先進的に取り組む。
・国際金融アーキテクチャを、すべての人々の利益となり、今日の経済的なニーズや政治的な現実を反映したものとする。
・宇宙空間活動の急速な進展に対応するために、宇宙の持続可能性の側面(探査、資源、交通、デブリ)に関する適切な宇宙のガバナンスを構築する。
・大規模かつ深刻なグローバル・ショックに対する国際的な対応を改善する。
・環境に関する国際的なガバナンスの仕組みを強化する。
■サミット後のフォローアップ
・「未来のための協定」の草案には、サミット以降の国連総会で進捗状況を確認するという約束が盛り込まれる。
ー日本語版制作:国連広報センター(2024 年 7 月)ー
<国連支援財団担当者より>
SDGsの目標年まで残り6年となりましたが、『持続可能な開発目標(SDGs)報告2024』によると、SDGsのターゲットのうち、現時点で達成に向けた軌道に乗っているのはわずか17%であり、半数近くは最低限かわずかに進捗、3分の1超は停滞または後退していることが明らかになりました。
そのような状況にあって、今年9月にニューヨーク国連本部で開催される「未来サミット」は、世界をSDGs達成に向けた軌道に戻す上で、極めて重要なものです。
本記事でご紹介したように、「未来サミット」では、政府間で協議された“行動志向の”「未来のための協定」を採択することが予定されており、具体的な政策が盛り込まれている点が注目されます。
SDGsが危機に瀕している今、“誰一人取り残さない(leave no one behind)」”という誓いを新たに、実りある「未来サミット」となることを期待したいと思います。
(出所)
国際連合広報センターウエブサイト、「2024年9月に開催される「未来サミット」の目的や背景をまとめた日本語資料ができました!(https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/49013/)」、2024年08月02日