【注目の国連情報】「アフリカは進展の兆しを示している」とグテーレス事務総長が日本で開催された開発会議で発言
ー2025.9.16ー
最近の国連活動の中で、今回は国連ニュースセンターが配信している「UN News」の中から、以下の記事についてそのポイントをご紹介します。
●「アフリカは進展の兆しを示している」とグテーレス事務総長が日本で開催された開発会議で発言 (2025年8月20日)

<要旨>
グテーレス国連事務総長は水曜日、アフリカ大陸の発展に焦点を当てた日本での会議で演説し、アフリカが自らの将来に影響する決定においてより大きな発言権を持つべきだと改めて訴えた。
<概要・ポイント> ※文中の■小見出し及び記事の要約は、国連支援財団による
事務総長は「世界で最も若い人口、豊富な天然資源、そして活気ある起業家精神を持つアフリカは、進歩する準備ができている」と横浜で開かれた第9回アフリカ開発会議(TICAD)で語った。また、事務総長は、会議のテーマである「アフリカと共に革新的な解決策を共創する」は、アフリカやそれ以外の地域でより平和で繁栄し持続可能な世界を築くのに役立つことを思い起こさせるものだと述べた。
■進歩と改革
・この点に関して、事務総長は投資、改革、パートナーシップを通じて持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた進歩を加速させる必要性を強調した。
・事務総長は、以下のような協力の5つの分野を強調した。
(1)グローバルガバナンス機関の改革
・まず、長年にわたり推進してきたグローバルガバナンス機関の改革が挙げられる。これは、現代の現実を反映させるための取り組みである。
・「アフリカは、その将来に影響を与える決定を形成する上で、より強い発言力を持つ必要がある」とし、「これには、アフリカが常任理事国を擁しておらず、他の地域も依然として過小代表されている安全保障理事会の改革も含まれる」と述べた。
・また、現在のシステムを「不当かつ不公平」と表現し、国際金融構造の抜本的な見直しと、債務救済への大胆な行動を求めた。
(2)バリューチェーンと再生可能エネルギーへの投資
・次に、持続可能なグローバル・バリューチェーンへの投資と地域統合に焦点を当て、「アフリカの繁栄への道は、アフリカ大陸自由貿易圏の利益を享受しながら、原材料に付加価値をつけ、適切な雇用を創出し、回復力を構築することに重点を置く必要がある」と述べた。
・続いて「アフリカのエネルギーの逆説」に対処する必要性を強調した。アフリカ大陸は再生可能エネルギー生産に膨大な潜在力を有するにもかかわらず、この分野への世界的な投資のわずか2%しか受けていない。一方、約6億人のアフリカ人が電気を利用できない状況にある。そのような状況に対して、事務総長は「アフリカは、再生可能エネルギー技術を支える重要鉱物の産地でもある。本来、それらを保有する国々が、地域および世界のバリューチェーンに付加価値をもたらしつつ最も優先的に恩恵を受けるべきだ」と述べた。
(3)テクノロジーへの投資
・次に事務総長はテクノロジーに目を向け、人工知能(AI)を含むデジタル革新を開発に活用するよう求めた。また、日本の技術的リーダーシップはデジタル格差の解消に貢献できるとし、「技術によってアフリカ諸国が取り残されるのではなく、適切なデジタル公共インフラを備えて追いつくことができる」と述べた。
(4)若者への投資
・事務総長は「若者はアフリカの未来を築く担い手である」として、若者のスキルと教育、特にSTEM(科学、技術、工学、数学)への投資の必要性を強調した。そして「経済、社会、政治制度全体にわたって女性の完全な参加に投資しよう」と付け加えた。
(5)平和への投資
・事務総長は最後に「持続可能な開発には、持続可能な平和が必要だ。アフリカ連合が明確に指摘するように、銃声を沈黙させることによって。そしてあらゆる形態の暴力を終わらせ、社会の一体性と安定を強化することで、アフリカへの投資とビジネスを呼び込むことができる」と述べ、平和と繁栄のつながりを認めて締めくくった。
■TICADについて
・アフリカ開発会議(TICAD)は、多国間協力とパートナーシップにおける関係強化を通じてアフリカの発展、平和、安全を促進することを目的として、1993年から開催されている。
・日本と国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)が共催している。
<国連支援財団担当者より>
今回ご紹介したグテーレス国連事務総長の演説は、アフリカの未来に対する明るい兆しと、それを実現するための国際的な責任を改めて私たちに問いかけるものでした。SDGsの達成に向け、ガバナンスや投資、技術、人材、平和といった多面的なアプローチが求められていますが、なかでも印象的だったのは「アフリカのエネルギーの逆説」です。再生可能エネルギーの潜在力が非常に高いにもかかわらず、いまだ6億人が電気にアクセスできないという現実は、国際社会の構造的課題を象徴しているように思います。アフリカの声をより反映した仕組みづくりと、公平な投資のあり方を考えることが、未来を分かち合う第一歩となるでしょう。アフリカを「支援すべき地域」としてではなく、「共に未来を創るパートナー」として捉える視点が、これからの国際協力には欠かせないのだと改めて感じました。
(出所)
国連ニュースセンター「UN News」:「Africa is poised for progress’ Guterres tells development conference in Japan(https://news.un.org/en/story/2025/08/1165687)」のDeepL翻訳又はGoogle翻訳による日本語訳を基に国連支援財団作成