【注目の国連情報】AIは4分の1の雇用を脅かすが、真のリスクは代替ではなく変革である
ー2025.6.17ー
最近の国連活動の中で、今回は国連ニュースセンターが配信している「UN News」の中から、以下の記事についてそのポイントをご紹介します。
●AIは4分の1の雇用を脅かすが、真のリスクは代替ではなく変革である (2025年5月20日)

<要旨>
女性と事務職員は、人工知能によって役割が根本的に変化するリスクが最も高く、包括的な政策対応を求める声が高まっている。
<概要・ポイント> ※文中の■小見出し及び記事の要約は、国連支援財団による
国連労働機関(ILO)とポーランド国立研究所による新たな共同研究によると、世界の雇用の4分の1は、いわゆる「生成型人工知能」(Generative AI、GenAI)の影響を受ける可能性がある。この研究によると、結果として雇用の大幅な減少ではなく、職務内容の変革が起こる可能性が高いという。
GenAIとは、ユーザーの指示に応じてテキスト、画像、コード、データサマリーなどのコンテンツを作成できるシステムを指す。このようなツールが広く普及するにつれて、従業員が日々行う業務に変革をもたらすことが期待されている。著者らは、「現在のAI技術で完全に自動化できるタスクを含む仕事はほとんどない。GenAIの影響として最も可能性が高いのは、仕事の変革だ。」と述べている。
■女性は不均衡な露出に直面している
・この調査によると、高所得国では、AIによるタスク自動化のリスクが最も高いと考えられる職業が女性の雇用の9.6%を占めており、これは男性のほぼ3倍に相当する。
・世界的に見ると、女性の職業の4.7%が最もリスクの高いカテゴリーに該当する一方、男性の場合は2.4%となっている。
・この格差は、最も危険にさらされている職業グループの一つである事務職や管理職に、女性が過剰に就いていることに大きく起因している。これらの仕事には、データの入力や文書のフォーマットやスケジュール管理などのタスクが含まれることが多く、これらの機能は AI テクノロジーによってすでに効率的に実行できる。
・これらの役割が完全になくなることはないだろうが、部分的な自動化は仕事の質を低下させ、責任の減少、賃金の停滞、不安の増大につながると報告書は警告している。
・対象を絞った研修や役割の再設計がなければ、一部の労働者、特に女性は適応する機会が限られる可能性がある。
■世界的な不平等
・報告書はまた、地域間の著しい違いも明らかにしている。高所得国では、GenAIにさらされる職種が全体の34%を占めるのに対し、低所得国ではわずか11%である。ラテンアメリカやアジアの一部などの中所得地域は、その中間に位置する。
・欧州と中央アジアでは、事務職における女性の雇用率の高さとデジタル導入の広まりにより、男女格差が最も大きくなっている。
・サハラ以南のアフリカ、南アジア、アラブ諸国などの地域では、現時点では全体的なリスクは低いものの、AI技術が安全策なしに普及すれば、依然として大きな混乱が生じる可能性がある。
■洞察を行動に移す
・生成型AIへの移行が労働者を置き換えるのではなく、むしろ支援するものとなるよう、ILOは政府、雇用主、労働者団体に断固たる行動をとるよう求めている。
・推奨される対応の中心となるのは、特に女性や事務職、管理職に就いている人々を対象に、デジタルスキルとトレーニングへのアクセスの強化である。また、AI計画をより広範な労働市場と教育政策に統合することの重要性も強調している。
・変革に向けて労働力を準備するには、技術的な訓練だけでなく、支援的なインフラ、近代化されたカリキュラム、雇用主のニーズと国の政策の調整も必要になる。
■包括性は必須
・著者らは、この移行の中心には包括的な社会対話が不可欠であると強調する。労働者は職場におけるGenAIの導入と活用方法について発言権を持つべきであり、その経験が導入に関する意思決定に反映されなければならない。この関与がなければ、男女格差の拡大や雇用の質の低下など、不平等な結果が生じるリスクがはるかに大きくなるだろう。
・最後に、報告書は、デジタルアクセスが限られている地域が取り残されてはならないことを強調している。インフラを拡大し、テクノロジーへの公平なアクセスを確保することは、すべての国がそれぞれの立場で仕事の未来を切り開くための重要なステップである。
<国連支援財団担当者より>
AIの進化は、私たちの働き方に大きな変化をもたらしていますが、その影響は一様ではありません。今回紹介した国連の報告では、特に女性や事務職に従事する人々が大きな影響を受けることが指摘されており、ジェンダー視点の重要性を改めて実感します。さらに、高所得国と低所得国の間でもAIの導入リスクに大きな差が見られ、AI技術が安全策なしに普及すれば、世界的な不平等が広がることも懸念されます。技術革新が誰かを置き去りにするのではなく、すべての人にとって包摂的なものとなるよう、社会全体で備える必要があります。私たち一人ひとりがこの「変革」にどう向き合い、どう行動するかが問われています。
(出所)
国連ニュースセンター「UN News」:「AI threatens one in four jobs – but transformation, not replacement, is the real risk(https://news.un.org/en/story/2025/05/1163486)」のDeepL翻訳又はGoogle翻訳による日本語訳を基に国連支援財団作成